線から塊へと

2年前か?推理作家協会賞の短編部門で
賞をとった「傍聞き」と
候補作だった「退出ゲーム」
私としては地元出身作家という贔屓目抜きにしても
トリッキーで強烈なインパクトがあった
「退出ゲーム」を断然応援した。
「傍聞き」は玄人好みというか地味というか、上手いというか・・
ただストーリーを覚えていないのは事実だ。
「陽だまりの偽り」も読んだが
悪くなかった。という印象だけはあるが筋は全く覚えていない。
今作も短編集だと思ってそういう雰囲気なんだろうと借りたが
これはぶっとんだ。
短編連作式ではあるが
一つの誘拐事件が想像と違う展開をしだす。
一章ごとの毛色が違う。なのにこれが違和感なく次章へ次章へと
繋がっていく。
こういう本を読むと作家という職業の凄みを感じるし、
読んでよかったと素直に思える。
線の波紋

「他殺のセン、自殺のセン、狂言のセン、怨恨のセン。
そんな言葉があるように、事件は一本の線にたとえられる」
笹部の物真似だった。
「しかし、わたしの感覚で言えば、
それは線よりもむしろ一個の塊に近い。
なぜなら、事件は波を起こすからだ。池に落ちた小石のように・・・」