ピエロ・ザ・漫才

ミステリィとしては仕掛けが甘いとか
結末が透けているとか、批評は目にするけれど
伊坂幸太郎は、そういった読み方ではなくて
漫才を読書する形なのだと、再読して思う。
常にキャラの強いボケを相手に
泣き顔と笑い顔でペイントされた重力に逆らえないピエロ役が
ツッコんで漫才形式でストーリィが進むのが
どの作品にもみられる流れなのだろう。
だから、
設定がどうだって問題ないし
もうええわ、やめさせてもらうわ。
で締めちゃったって全然問題ないのだ。


黒沢と漫才

「仕事は一人でやるものだ」
ビートルズは四人でやってましたよ」
「だから解散したんだろ。ボブ・ディランは永遠に解散しないぞ」
「そりゃそうですよ」

「で、ある日、自分の家が空き巣に入られて愕然とする」
「それは何かの教訓ですか」
「自分が考えているようなことは、別の人間も考えているってことだ。
大抵の企みは自分に返ってくる」


兄弟で漫才

「『焦って約束するな』」
「何だそれ」
ガンジーの言葉だよ」
「おまえは、本当にガンジーが好きだ」


郷田と漫才

「根拠もないのに?」
「自信に根拠があるのって卑怯な気がしませんか?」


トリオザ漫才

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」
「そうとも、重力は消えるんだ」


重力ピエロ (新潮文庫)