落語ミステリー略してオチミス

酔っぱらっていなくても、こんがらがって何々?えーっと・・

二荷の水瓶を瀬戸物屋に買いに出かける。
兄貴分はなぜか一荷入りの瓶を指さし番頭と値段の交渉を始める。
「そりゃ、もう、初めてのお客様でございますし、軒並み同商売の中を、
わざわざうちへおいでいただきましたので、ぐっと勉強させていただきまして、
三円五十銭でございます」
「ああ、そう。じゃあ、もしも俺たちが初めての客じゃなくて、軒並み同商売じゃなくて
わざわざ来ないで、勉強しなかったら、いくらになるんだ」
「ええ・・それは三円五十銭」
「何だい同じじゃねえか」
兄貴分は強引に五十銭まけさせ店をでるが
「なあ兄貴、だめだよ、こりゃ。二荷入りを買ってこいと言われてたんだ。」
「わかってる。心配すんな」
瀬戸物屋に戻り兄貴分は
「本当は二荷入りがほしい。買い替えたいと思うんだ」
「二荷入りでしたら一荷入りが三円五十銭で倍の七・・・」
そこで番頭ははっと気づくが、あとの祭り。再び強引に六円に値切られる。
それで終わりかと思うと、さにあらず。
「ところでものは相談なんだが・・さっき買った、この二荷入りの瓶だけど
あれ、引き取ってもらえないもんかな」
「ええ、もちろん結構でございます」
「いくらで引き取ってくれるんだい」
「いくらもなにも傷さえなければ売値の三円で引き取らせていただきます」
「ありがたいねえいい店入ったよ。じゃあ何だ、
さっき三円そっちへ渡したよな」
「はい」
「で、この瓶を三円で引き取ってくれるんだろ」
「おっしゃる通り、引き取らせていただきます」
「だったら三円たす三円で、この六円の瓶を持ってってかまわねいよな」

道具屋殺人事件──神田紅梅亭寄席物帳  [ミステリー・リーグ]

時そばであれ
壷算であれ、話はバカバカしくて微笑ましいが、案外、形を変えたら
簡単に騙されるのかもしれない。

あるホテルに十人分の予約をしておいたのに、到着したら
シングル九つしかリザーブされていなかった。ほかに泊まれる部屋もない。
ホテルのマネージャは涼しい顔で、
「ご安心ください。ちゃんと十人泊まれますから」
マネージャは客たちに仮に一番から十番の番号をつけてから、こういいます。
「では、まず一番と十番のお客様、一号室へお入りください。
大変恐縮ですが、そこでしばらくお待ちいただけますか。
つまり、二人の方にお入りいただくことになります。
では、次に三番のお客様が二号室にお入りください。
四番の方は三号室、五番の方は四号室へどうぞ。
六番の方は五号室、七番の方は六号室、八番の方は七号室、九番の方は八号室に
お入りくださいませ。
さて大変お待たせして申し訳ありませんでした。一号室でお待ちいただいていた十番の
お客様、お荷物を持って九号室へお入りください。
どうです。ちゃんと全員泊まれたじゃありませんか」